TOP特集新製品・新技術歴史を見たマテリアル【新】こんなところにアルミ・銅
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  1月20日、米国の第44代大統領に就任したバラク・オバマ氏はかつてリンカーン大統領が使用した聖書に手をのせ就任を宣誓した。そのオバマ氏が敬愛してやまないエイブラハム・リンカーン(1809−1865年)が刻まれているのが米国の1セント硬貨である。
1ドルの1/100の価値を持つ1セント硬貨は、直径19.05mm、厚さ1.55mm。ペニー(Penny)と呼ばれたりもする、お馴染みのコインだ。米国に旅行に行ったり長期滞在したりしたことのある人なら、帰国時に残った1セント硬貨の使い道に困り、いまだ財布や引き出しの片隅に眠らせている人も多いことだろう。

米国では、1セント硬貨は「ラッキーペニー」などとも呼ばれ、道に落ちている1セント硬貨を拾うと良いことが起こると言われている。ただし、ただ拾うのではなく、リンカーンの顔が刻まれた表が上に向いていないと効果はないらしい…。
日本の女子高校生が履いていることでお馴染みの靴、ローファーは、「ペニーローファー」とも呼ばれる。これはローファーの甲の部分に飾りの隙間があるが、ここに1セント硬貨をお守りとしてはさむ習慣があったことから、こう呼ばれるようになったという。とにもかくにも幸運のコインとして1セント硬貨は米国人に親しまれてきたのである。
 
生誕記念にちなんで生まれたリンカーン・セント
 
リンカーンがコインに刻まれるようになったのは1909年からで、それ以前の1セント硬貨には自由の女神がモチーフとなっていた。たとえば09年以前に鋳造された1セント硬貨は「インディアン・ヘッド・セント」と呼ばれるが、ネイティブ・アメリカンとして描かれた自由の女神が描かれている。
1909年はリンカーンの生誕100周年であり、これを記念して当時の大統領セオドア・ルーズベルトが、リンカーン像を表側に入れた「リンカーン・セント」を考え出した。それまで特定の人物の肖像を入れたコインは存在しなかったため、大きな試みといえる。そして1959年のリンカーン生誕150周年には、裏側のデザインも従来の小麦の穂が描かれたシンプルなデザインから、ワシントンD.Cにあるリンカーン記念館に変更された。
実はリンカーン・セントには、表だけでなく裏にもリンカーン像が存在することをご存知だろうか。もし手元に1セント硬貨があれば目をこらしてみて欲しい。リンカーン記念館の中央の柱と柱の間に注目すると、そこには小さな小さなリンカーン像が描かれているのだ。知る人ぞ知るリンカーンの坐像である。このように、裏面の記念館は実に細部に至るまで描かれているのが特徴的だ。
 
1セント硬貨の裏側。目をこらしてみると、中央の柱と柱の間には、リンカーン像が。
 
時代とともに銅貨の材料構成も変化
 
長い歴史のなかで、1セント硬貨に使用される材料の構成もさまざまに変化した。主に用いられてきたのは銅や青銅等である。一時的であるが、戦中にはスチールに亜鉛めっきが施されたものが鋳造された時期もあった。1970年代初頭には使用される銅の価値が上がり、代用のアルミニウムが使用されたものの、流通には至らなかった。1982年まで基本的には銅が使用されていたが、使用される銅の価値が1セントを超えるようになり、現在は亜鉛に銅めっきされたものが使用されている。
2009年はリンカーン生誕200周年であり、またリンカーン・セントが生まれてから100年である。記念すべき今年は新たなデザインのコインが鋳造されるのでは、という話も出ている。長い年月の中で変化してきた1セント硬貨。年代によっては希少価値の高いものも存在し、コレクター垂涎の1セント硬貨もある。新大統領就任に沸く今日、財布や引き出しに眠る1セント硬貨をひっぱり出して、リンカーンの顔を拝んでみるのもまた、良い機会かもしれない。
 
 
 
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