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世界で初めてアルミホイールを装着したブガッティ「タイプ35」
写真:トヨタ博物館所蔵
 
華々しくレースの世界に登場
 
1924年、後世に名をのこすレーシングスポーツカー「タイプ35」が誕生した。手がけたのはエットレー・ブガッティ。かの有名なフランスの高級スポーツカーブランド「ブガッティ」の創始者である。レーシングカーの持つ機能美を徹底的に追求し、各部品の調和を考え、美しいクルマをつくり上げた。
このクルマは美しいだけではない。メカニズムでも大いに注目を集めた。なかでも人々を驚かせたのが、世界初のアルミホイールを装着したことである。20世紀に入って自動車部品の新材料として注目されるようになったアルミニウム。ブガッティはいちはやくアルミニウムの特性に着目した。そしてアルミホイールとブレーキドラムの一体化を考え出した。これはブレーキドラムをアルミホイールに組み込むことで、アルミニウムの放熱性を利用してブレーキングによる発熱を逃がしやすくした構造である。またレース中はできるだけ作業時間を少なくする必要があるが、一体化することでトラブル発生時はホイールを修理または交換すればよく、作業性が向上した。
タイプ35は当時のビッグレースを相次いで勝利し、それまでのスチールホールに比べ、高い放熱性や軽さでアルミホイールの優位性を実証したのである。
 
レーシングカーにつぎつぎと採用されたアルミホイール
 
タイプ35の活躍によって、いちやく脚光をあびたアルミホイールであったが、その後ぞくぞくと採用されたかと言えばそうでもない。おそらくタイプ35における実用化は時代を先取り過ぎたのであろう。時代が追いついたのは第二次世界大戦を経た復興期、1950年代半ばである。イギリスのジャガー・スポーツプロトタイプカー「Dタイプ」にアルミホイールが採用された。サーキットに登場したDタイプは快調な走りをみせ、華々しい勝利を飾った。このクルマにはアルミホイールとともに新たにディスクブレーキも採用されたが、この二つは非常に高い評価を受けた。当時、レーシングカーのホイールはスチールホイールが主流だったが、クルマの性能が進化するとともにコーナリング速度が上がるようになっていた。そこで軽量なアルミホイールを使用すれば、バネ下重量が低減しサスペンション性能が向上する。さらにアルミニウムは放熱効果も期待できる。このような利点のあるアルミホイールをエンジニアが放っておくわけがない。 加えて、大戦中に航空機材料としてアルミニウムの研究開発が進み、アルミニウム製造技術が向上したこともあって、その後、つぎつぎとレーシングカーにアルミホイールが採用されることとなる。さらに1958年にはマグネシウムがホイールに採用され、軽合金ホイールがレースカーの主役となる。
レースの世界で急速に普及したアルミホイールは、その優れた特性ゆえ、その後、瞬く間に市販車に採用され、広く普及するようになる。
 
多くの人々を惹きつける美しさ
 
日本においては、国産初のアルミホイールが生産され始めたのが1966年。以降、輸出向けやレース向けに生産された。
このころ、高性能なスポーツカーが登場し、我が国にモータースポーツフィーバーがまき起こった。これを象徴するのがトヨタのスポーツカー「2000GT」だ。このクルマは1967年に登場し、非常に高い人気を博した。2000GTにはさまざまな新しい試みが取り入れられたが、なかでもホイールにはマグネシウムが採用された。我が国における軽合金ホイールのパイオニアといえる。このマグネシウムホイールは神戸製鋼所が製造したものである。
一方、量産車では、当時はスチールホイールが主流であったが、しだいにクルマの個性が注目されるようになり、アルミホイールへ目がむけられるようになっていった。70年代半ばともなるとアルミホイールの人気はますます高まる。性能はもちろんのこと、人々を惹きつけたのはその美しさだ。多様なデザイン性、きらめく光沢。クルマをドレスアップする目的で多くの人々がアルミホイールを求めた。

いまや颯爽と走るスポーツカーの多くはアルミホイールを装着している。アルミホイールの輝きはただ美しいだけではない。そこには過酷なレースの世界で培われてきたという、品質への信頼性が備わっている。多くの人々がアルミホイールを求めてやまない理由はそこにあるのだろう。


マグネシウムホイールを採用したトヨタ「2000GT」
写真:トヨタ博物館所蔵
 
 
 
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