縁側に腰かけ、たそがれを楽しむ

強い日差しにほてった身体も、縁側で夕暮の風に身をまかせれば心地よい。縁側から見上げる月はどうしてこんなにきれいなのだろうか。
最近では縁側のある家を見かけなくなった。昔は、夏になればスイカをほおばり種を飛ばしたり、冬になればひなたぼっこをし、縁側に座れば家にいながら季節や自然を味わうことができた。内で楽しむ外の世界。ここには住む事を楽しむ日本人の知恵が詰まっている。

 

涼と暖をもたらす縁側の働き

ひとくちに縁側と言っても雨戸やガラス戸で仕切られ、廊下の役割を兼ねた部分を「縁側」と呼び、戸外に張り出した部分は「濡れ縁」と呼ぶ。もともとは家の中に上がりやすいよう吹きさらしの濡れ縁をつくったのが最初で、その面積が広がり雨戸を設けるようになり、縁側となった。縁側は、夏には強い日差しが直接和室に入るのを防ぎ、冬にはサンルームのように空気を暖め、また室内の暖かい空気を外に逃がさないようにする働きもする。この効果は縁側と部屋の境にある障子を開け閉めすることでさらに高まる。縁側は日光をうまく取り入れることで冷暖房器具に頼らずに涼や暖を家にもたらすのである。

 

縁を大切にするあいまいな空間

欧米の家はドア 1 枚によって内と外をはっきりと区分しているが、日本の家には、内と外との境界をあいまいにする中間の領域が存在する。縁側はまさにその中間の領域で、人や自然が内部に入り込んでくる時のクッションのような役割を果たしている。たとえば隣人がたずねてきた時、世間話などは縁側で行われる。話が長くなればお茶を出して縁側でもてなしたりもする。しかし隣人は家の内には入り込まない。入り込まないが、家の内の様子は縁側からなんとなくうかがえる。プライバシーをある程度守りながら、ご近所は親しいコミュニケーションをとることができるのである。その昔縁側は、江戸時代に武士が登城した際の詰め所であり、御目見人の披露に使われた場所であった。つまり縁側は人と人が出会う場所、人と人の縁をつくる場所であったのである。最近、愛知万博で人気の「サツキとメイの家」(映画「となりのトトロ」の主人公が暮らす昭和 30 年代の家を再現)には、きちんと縁側が作られている。外とのつながりを設けた日本家屋。かつて我々は、雨風をしのぐだけでない、家に住む事の楽しさを知っていたのかも知れない。縁側で雲を眺めながら物思いに耽ると、ここでのあいまいなひとときが日本人には今必要なのかもしれないと感じる。
 
 
 
 
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