藁が入っていないわら半紙
最近わら半紙というものを見かけなくなった。プリンターやコピー機で出力することが多くなった今、わら半紙は紙詰まりを起こしやすくインクが滲んでしまうことから敬遠される傾向にあるようだ。わら半紙といえば、年配者には謄写版で刷ったテストのプリントが懐かしいが、実は今でも教育の現場では活躍していると聞いた。簡易印刷機で刷るのにはまったく問題はないそうだ。 しかしこのわら半紙、本来は稲や麦の藁が使われているのだが、今は名ばかりで、藁が使われることはほとんどないという。では、藁でつくられた本来のわら半紙はどうしたのかというと、書道の半紙などとしてわずかに用いられるくらいで、世の中にはあまり流通していない。そのためか、価格は上質紙より高くなっているのだという。
 
昔は多彩な使い道があった藁
藁の文化は稲作とともに日本で開花し、かたちを変えつつ二千年以上にわたり引き継がれてきた。日本人にとって稲作の副産物である藁はとても重宝な存在であり、衣食住の生活いたるところで使われてきた。 まず衣に関わるものとしては、編み笠、蓑(みの)・草履(ぞうり)、草鞋(わらじ)などが思いつく。これらを作ることは、ひと昔前までの農家にとっては大切な仕事だった。つぎに食ということになるが、これは人間が食べるのではなく、もっぱら家畜の飼料として利用された。直接口にはしないが、納豆づくりには藁が使われている。藁に生息している枯草菌が大豆の発酵を促して納豆にしてくれるのだ。そして、住といえば畳である。さすが畳表には使われないが、藁床は藁を重ねてつくられている。葦(あし)や菅(かや)ほど普及しなかったが藁を葺いた屋根もあった。また土壁には切り刻んだ藁「すさ」を混ぜで補強した。このように藁はさまざまな場面で日本人の生活を支えてきた。 藁という字をみてみよう。下から順に「木」、「高」、「草」という漢字からなっていることがわかる。木より高価な草、利用価値の高い草ということを表しているのだという。いかに日本人が藁を重宝していたかが、この漢字を見ても知ることができる。
 
祝祭や儀礼の道具としての藁

そんな藁も年々使われなくなってきた。わら半紙のように、日用品のほとんどが量産できる材料にとって代わられいる。しかし一方で、量産できる材料に置き換えられないものもある。日本古来の宗教的な風習、祝祭や儀礼に使われる藁である。藁には古くから霊的な力が宿るとされてきた。たとえば正月の風習である注連縄(しめなわ)や注連飾(しめかざり)。藁を細工して作られたこれらは、聖と俗の境界域をあらわし、神々を招くという霊力を持っていた。また、盆になれば門口に藁火を焚き、盆馬(藁馬)や藁人形をつくって死者の霊を送り迎えした。ほかにも、各地に残る伝統行事や民芸品などの多くに藁は使われている。藁はまだまだ、日本人の暮らしになくてはならないものなのだ。

 
 
 
 
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