さびしい冬に咲く明るい花
頬をさす木枯らしがいっそう厳しくなると、懐かしいメロディを思い出す。
「さざんかさざんか咲いた路〜たきびだたきびだ落ち葉たき〜♪」
なんとあたたかい唄であろう。花枯れの冬の庭に咲く山茶花(さざんか)の赤や桃色や白が、焚き火のぬくもりとともに、明るい印象を与えてくれる。
山茶花(さざんか)は、ツバキ科ツバキ属の耐寒性常緑小高木。花の少ない晩秋から冬にかけて咲き出す。さびしい冬の貴重な彩りとなる花である。
 
違いは散り際にでる
山茶花と聞いて気になるのが、椿(ツバキ科ツバキ属)との違いである。二つの花はよく似ており見分けは難しい。その違いを記すと、まず開花時期。椿は春に咲くが山茶花は冬に咲く(ただし寒椿は冬に咲く)。次に葉っぱが、椿は縁にギザギザがないが、山茶花は縁が細かくギザギザしている。それから香り。椿は芳香がないが、山茶花はかぐわしい良い香りがする(ただし「香り椿」と呼ばれる種類の椿は芳香を持つ)。
そして、なんといってもわかりやすいのが散り方だ。椿はポトリとひとかたまりになって落花するが、山茶花は花びら一枚一枚がはらはらと散るのである。
椿の散り方はあまりに劇的であるため有名であるが、首が落ちる様子を連想させると、良いイメージはもたれていない。マナーとして、入院のお見舞いに椿は持っていかない方がよいとされるほどである。
一方、山茶花は名残惜しく一枚一枚散っていく、繊細な終わり方である。よく似た二つの花は、かたやドラマチックに、かたや繊細に最後を遂げる。
地面に落ちた花びらを見れば、どちらの花かはっきり見分けがつくはずである。
 
日本から海を渡った山茶花
実は、山茶花の原産国は日本である。原生種は四国、九州、南西諸島の山地に自生し、江戸時代に、品種改良が加えられて庭木として広まった。もともとは白色の花だけだったが、桃色や赤など、多彩な山茶花がつぎつぎと生み出された。
そしてその美しい彩りは、オランダ人の目にとまることになる。江戸時代、長崎の出島のオランダ商館に訪れたツンベルク医師は、この冬に咲く美しい花を持ち帰り、そしてその後、山茶花はヨーロッパに広まったという。それゆえ、英名も学名も、ともにこの花の名前は「Sasanqua」である。
生糸や砂糖、薬品、蘭学、そしてカステラ…出島から日本にもたらされた数々の輸入品は有名であるが、しかし日本からの輸出品の一つに、山茶花があったとは驚きである。

街でふと山茶花に遭遇すると、思わず持ち帰りたくなったオランダ人医師の気持ちがわかる。日ごと寒さが増すこの時期に、つぎつぎと花を開く山茶花。色味の乏しい庭がそこだけぱっと明るく華やぎだす。まるで冬の焚き火のように、周囲を明るくする山茶花は、寒さを忘れさせる華やぎに満ちている。
 
 
 
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