みずみずしい新茶の季節

「夏も近づく八十八夜。野にも山にも若葉が茂る」
新緑が生き生きと伸び盛る5月。あちこちから新茶の知らせが届き始める。唱歌「茶摘」で知られるように、八十八夜はお茶の新芽が芽吹く頃。この時期、茶園では新茶づくりが最盛期をむかえる。
日本では1年に3、4回ほど茶摘が行われるが、このうち4月下旬〜5月下旬に摘み取られる、その年初めて芽生えた新芽でつくられるお茶を新茶(一番茶)という。この時期に伸びる新芽には秋から春にかけて蓄えられた栄養がたっぷり含まれており、一年の中でもっとも美味しいお茶ができるといわれている。昔から八十八夜に摘み取られたお茶を飲むと長生きができる、一年間無病息災で過ごせるなどの言い伝えがあり、たいへん縁起が良いものとされている。

 

日本の風土から生まれた節目の言葉

八十八夜は節分、彼岸、土用などと同じ季節の節目を表す「雑節(ざっせつ)」のひとつである。立春から数えて88日目の日のことで、例年5月1日〜2日頃にあたる。雑節と同様に暦に記される春分、夏至、立秋、大寒などの「二十四節気」が中国でつくられた言葉なのに対し、八十八夜は日本の気候や風土にあわせて誕生した言葉だ。
「八十八夜の別れ霜」と言われるように、日本ではこの頃から霜がおりることが少なくなり、農作物が霜の被害から開放される目安となってきた。一部の農家では、現在でもこの日を目安に霜除けのよしずを取りはずしたり、苗代づくりや畑の作物の種まきを始める慣習があるという。
また、八十八という字はひとつの漢字にまとめると「米」という字になる。昔は米ができるまでに88の手間がかかると考えられており、稲作を行う農家にとって八十八夜はとくに重要な日とされていた。

 

暦の上ではもうすぐ夏

「夏も近づく八十八夜」とは言ってもまだ5月。夏というには少し気が早い―そんなことを考えたことはないだろうか。しかし、暦の上の夏は確かに近づいている。例年5月5〜6日頃は二十四節気の「立夏」にあたる。つまり八十八夜の3 、4日後には暦の上では夏になるのだ。
気候が安定し、さわやかな陽気が続くこの頃。日本中で若々しい緑が萌え、農作物の新しい一年が始まる。日本で生まれた「八十八夜」は日本の気候や風土に自然に溶け込み、今も私たちの暮らしに根付いている。

 
 
 
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