日本でも宇宙開発に関するプロジェクトが進行している。そのひとつが、世界各国の共同プロジェクトである国際宇宙ステーション(ISS)への参加であり、ここに日本の実験モジュール「きぼう」が結合される予定だ。また日本が独自開発したHIIA型ロケットの打ち上げも、近々再開される。(参考サイト:宇宙航空研究開発機構 http://www.jaxa.jp/
このような国家的なプロジェクトだけでなく、大学や研究機関でも宇宙開発に関するユニークな研究が行われている。その中から、最近話題となった北海道大学の小型ハイブリッドロケットについてご紹介しよう。
 
安全で、何回も使えるロケットを開発
 
北海道大学構内の総合博物館。歴史的な展示物の並ぶ館内の一室に、銀色に光るロケットが飾られている。
「これが、私たちが開発したCAMUI型ロケットです」
案内してくれたのは、北大大学院工学研究科助教授の永田晴紀さん。CAMUI型ロケットの開発者である。ロケットの開発といえば、国を挙げての宇宙開発プロジェクトだと思われがちだ。ところがこのロケットは、低コストで安全な新方式を採用し何回も使用できることから、教育や研究目的での打ち上げ実験ができるという。2004年9月に発表されてからというもの、各方面からの問合せが絶えないという。
このロケットの方式はハイブリッドロケットと呼ばれている。ハイブリッドとは「組み合わせた」という意味だが、プラスチック固体燃料(この場合はアクリルブロック)と液体酸素を組み合わせた燃料を使用していることからこう呼ばれる。この方式では火薬を使わないため、製造や運用の経費を抑えることが可能となり、コストを抑えるには有利な方法である。しかし技術的な問題から、小型ロケットではこれまで成功例がなかった。CAMUI型ロケットはこれを可能にしたことから、世界初の快挙としても注目されている。
機体は、全長1.6メートル、直径8.9センチのジュラルミン製パイプで、機体の下部に燃料のアクリルブロックと液体酸素が組み込まれている。燃料を充填し直すだけで、何回も打ち上げることが可能だ。
「機体は既製品のジュラルミン製パイプを使って、安く製作しました。とくに塗装しなかったのは、メカニカルな感じを出したかったから。ロケットの推進力を損なわず、しかも経済的な機体を目指してきました」(永田さん)
 
CAMUI型ロケット
 
 
打ち上げ実験では、地元の人々も応援
 
打ち上げの手順はこうだ。まず、液体酸素から自然にガス化した酸素を利用してアクリルブロック燃料に点火する。点火を確認できたら、機体中央部にある高圧ヘリウムタンクに通じるバルブを開いて液体酸素タンクを加圧する。液体酸素が一気に燃焼室に供給されると、機体は大きな推進力を得て空に打ち上がる。
「最初に下の燃料のところに火をつけます。点火を確認できたら、横に付いている打ち上げバルブを遠隔操作で開く。1、2、3でシューッと打ち上がります。燃料は打ち上げ後4秒で燃え尽きます」(永田さん)
意外に短い時間で打ちあがるので、簡単なように思えるが、じつはその前の準備が大変なのだそうだ。札幌から車で約5時間の大樹町の打ち上げ場に何日も前に入り、燃料の注入などの準備を行うという。打ち上げ場のある大樹町は、「宇宙のまち」を掲げる町。地元の人々の協力も大きな力になる。
そういえば、日本初の宇宙飛行士、毛利衛さんは北海道出身。CAMUI型ロケット開発を支援するNPO法人「北海道宇宙科学技術創成センター(HASTIC)」も、研究者や地元市民の協力によって運営されている。永田さんによれば「北海道ほど、宇宙について熱心なところは他にない」そうだ。北海道の、広い空が宇宙への思いをかき立てるのかもしれない。
ロケットの発射準備
 
 
地球環境、微小重力実験などの新しい分野へ
 
これまでの打ち上げ実験での到達高度は約1キロだったが、永田さんたちは、より大きな機体の製作を行い、まずは地上60キロまで到達させることを目指している。地上60キロは成層圏と呼ばれる層で、ここの状態がオゾン層や地球温暖化など、気候変動に大きく影響するといわれている。ここにCAMUI型ロケットが達することができれば、成層圏の大気成分を採取して、分析することも可能となる。また、ロケット飛行時の微小重力環境を利用した実験などにも、CAMUI型ロケットが利用できるのではないかと期待されている。
昔、テレビで見たロケットの打ち上げ。轟音とともに飛び立ったロケットは、どこまでも高い空の中に吸い込まれていく。あのロケットはどこまで飛んでいくのだろうか。子ども心に「ロケットを打ち上げてみたい」と思った人も多いはずだ。東京育ちの永田さんも、じつは子どものころからロケットを飛ばしたいという夢を持っていたという。CAMUI型ロケットは、人々の夢を載せて、これからも空を目指す。
CAMUI型ロケットの打ち上げのようす
 
 
 
 
 
 
copyright (C) kobelco all rights reserved.