モンちゃん:
いよいよ秋本番ですねぇ。
 
アンサー氏:
今年の夏はとても暑かったから、なんかホッと落ち着いた感じかな。
 
モンちゃん:
夏は夏で面白いことがいっぱいあるけど、秋もいいですよね。紅葉もきれいだし。そうそう、この間みんなでやったアウトドアバーベキューも楽しかったですよね〜。
 
アンサー氏:
そうだね。あの時、モンちゃんが切ったタクアンがちゃんと切れていなくて全部つながっていたのには“これもある意味素晴らしい技術だ!”なんて皆で笑ったりしたんだよね。
 
モンちゃん:
あ、あれはですねぇ、包丁の切れ味が悪かったんですよ〜。もぅ、アンサー氏のイジワル…。
 
アンサー氏:
ははは、ごめんごめん。“切る”という作業は単純そうに見えて、実はなかなか難しかったりするからね。例えば、銅合金板条を切る工程でもさまざまな技術がいかされているんだよ。
 
モンちゃん:
それ、今回のテーマですね!圧延、矯正に続いて、今度は切る技術ですか。
 
アンサー氏:
そう、とても大切な製造プロセスだからね。銅合金条製品は、半導体リードフレームや端子・コネクタ等の電子部品に使用されるけど、それらの多くはプレス加工でいろいろな形状に加工されるんだ。
 
モンちゃん:
それはユーザーの加工メーカー等で行うんですよね。ユーザーからは銅合金の種類や特性、板厚なんかが指定されるんでしょ。
 
アンサー氏:
そう、板幅もね。板厚コントロールは圧延技術編で説明したけど、板幅はスリッターという設備で幅の広いコイルからユーザー指定の幅へ切断加工していくんだ。
 
モンちゃん:
それが、スリッター工程ですね。
 
アンサー氏:
図1を見てごらん。スリッターまでの製造工程中のコイル幅は約600〜750mmだけど、これをユーザー指定の幅へ切断していく。
 
【図1】 拡大する
 
 
モンちゃん:
へぇ、幅方向に切って細長くしていくのかぁ。だいたいどのぐらいの幅に切っていくんですか。
 
アンサー氏:
製品条は6〜数100mmとさまざまな幅があるんだ。また、コイルの重量も数10〜数100kgとさまざま。スリッティングされ、均一に巻き取られた製品条を横から見ると、ちょうどお菓子のバームクーヘンみたいになるんだよ。
 
モンちゃん:
バームクーヘン大好き!ふふ、イメージしやすいわぁ。
 
アンサー氏:
スリッターは金属用と紙、プラスチックなど非金属薄肉コイル用の2つに大きく分けられるけど、今回は金属用スリッターについて説明するよ。ほら、図2を見て。
 
【図2】 拡大する
 
 
モンちゃん:
スリッターの構造ってこうなってるんだぁ。
 
アンサー氏:
スリッターの切断方法を簡単に説明すると、まず上下に軸を設け、これにカッターバイトをセットする。
 
モンちゃん:
カッターバイトというのは刃のことですよね。
 
アンサー氏:
そう、円形刃だよ。そして、この上下のカッターバイトで材料を切断していくんだ。
 
モンちゃん:
2つの刃ではさんで切るなんて、ハサミと同じですね。この間座というのは何ですか。
 
アンサー氏:
これは、いわゆるスペーサー。カッターバイトとカッターバイトの間隔を設定するものさ。たいてい、間隔は多様な製品幅と図中のクリアランスを決めるため高精度が要求される。
 
モンちゃん:
クリアランスって、あの“クリアランス・セール”のクリアランス…??
 
アンサー氏:
ははは、モンちゃんの好きなそのクリアランスは“在庫一掃”の意味だけど、このクリアランスは機械類の作動を円滑に保つため構造上設けられた間隙のことなんだよ。
 
モンちゃん:
そーなんだ!いろんな意味があるんですね。…あ、そういえば銅合金板条みたいな金属板をハサミでじょっきんって切ったら、板が曲がったり歪んだりしそうだけど…。
 
アンサー氏:
あ、いいところに気がついたね。もちろん、そうならないようにスリッター設備にはいろいろな工夫が施されてるんだよ。
 
 
 
アンサー氏:
ここで高精度なスリッティングを行うためには「間座の寸法精度」「カッターバイトの寸法精度および材質」「上下軸の平行度や円筒度、軸方向の固定(ガタ)精度など」「適正なクリアランスとラップ設定および調整」という重要な管理技術が必要になる。
 
モンちゃん:
おお、たかが切るだけと侮るなかれ…ですね。
 
アンサー氏:
その通り。これらが満足していないと幅寸法精度低下や条の曲り、耳波、スリッティングによる高い残留応力が発生してしまうんだよ。特にIC用リードフレームや端子・コネクタに使用される材料は、ユーザーで精密加工されるため、これらの精度を厳しく要求されるんだ。図4を見てごらん。
 
モンちゃん:
リードフレームと接続用端子のプレス加工工程ですね。なるほど、銅合金条製品をいかに繊細に、しかも精密に加工していくかがよく解ります。
 
アンサー氏:
神戸製鋼では、スリッターを新しく設置する時には、さっきあげた管理項目は高精度に設計・製作し、定期的に精度の確認・調整を行っているんだよ。また、適正なクリアランスとラップは切断する材料によっても異り、材質にあった条件が設定され、その調整も熟練度を要するために厳しく管理しているというわけさ。
 
モンちゃん:
ちょっとした狂いも許されないですもんね。大変だぁ。
 
アンサー氏:
図3は切断切り口の形状を表したものだけど、クリアランスを変えるとせん断面と破断面の比率が変化してかえりの大きさも変化する。銅合金製品条に要求されるスリット品質には「“かえり”が小さいこと」「“スリット残留応力”が小さいこと」というのもあるからね。
 

出展:塑性加工(改訂版)鈴木 弘 偏
株式会社 裳華房
【図3】 拡大する
 
 
モンちゃん:
かえりが大きいとどうなっちゃうんですか。
 
アンサー氏:
ユーザーでスタンピング加工する際、かえりがこぼれて製品に押し込まれ、打こん疵になったり、寸法・形状にばらつきが発生する等の不具合がでてしまうんだよ。だから、かえりはなるべく小さくないとダメなんだね。
 
モンちゃん:
図4はスタンピング加工したリードフレームと接続装入端子のプレス加工パターンの代表例ということだけど…複雑なプレス加工ですね。
 

出展:図研プレス順送り金型の設計。明海進 著。日刊工業新聞社(昭和53年)
【図4 リードフレームの加工パターン/接続端子のプレス加工パターン】 拡大する
 
 
アンサー氏:
でしょう。こんなふうに複雑にプレス加工されると、製品条のスリット残留応力が大きい場合、プレス加工した時にリードフレームや端子に反りやねじれ、キャンバー(曲り)が生じて製品寸法・形状に影響してしまうんだ。
 
モンちゃん:
それが図5ですね。クリアランスとかえりや残留応力の関係はどうなっているんでしょう。
 

出展:せん断加工(プレス加工の基本技術)(社)日本塑性加工学会(1992年)
【図5】 拡大する
 
 
アンサー氏:
一般的にはクリアランスが大きいほどかえりは大きく、残留応力は小さくなる。もちろんクリアランスが小さくなれば、かえりは小さく残留応力は大きくなる。
 
モンちゃん:
えっ、じゃあ、かえりも残留応力も小さくするためには調整も微妙になってきますね。
 
アンサー氏:
そうなんだよ、だからこそクリアランスは適正な設定が必要なんだ。それと、残留応力の多くは切断そのものによるところもあるけど、カッターバイト側面と材料の切断面の接触による摩擦により生じるものも大きく占めているから、スリット時にはこの摩擦係数を下げるために潤滑油を使用するんだ。また、ラップ量も必要以上に大きくすると、カッターバイト側面と材料の切断面の接触長さが長くなり、残留応力が大きくなる原因にもなる。
 
モンちゃん:
ラップ量の設定も適正でなければならないんですね。
 
 
 
アンサー氏:
これらの条件設定も大切だけど、それ以前にもまだ大切なことがあるんだ。なんだと思う?ヒントはモンちゃんがキャンプで切ったタクアンだよ。
 
モンちゃん:
うう、私が切ったのに、ちゃんと切れずつながってたタクアン…だから、あれはですねぇ、包丁の切れ味が…って、そうか、カッターバイトの切れ味ですね!
 
アンサー氏:
当たり!色々な設定条件以前にカッターバイトの切れ味が良くなければ、良い品質が得られないってことさ。だから、カッターバイトも包丁を研ぐように定期的に研磨して、常に良い切れ味の状態を保っているんだよ。
 
モンちゃん:
ほら〜、私だって研いだ包丁使えば、タクアンぐらいちゃんと切れるんですってばぁ。
 
アンサー氏:
まぁまぁ、そう拗ねないで。気を取り直して図6を見てごらん。
 

出展:せん断加工(プレス加工の基本技術)(社)日本塑性加工学会(1992年)
【図6】 拡大する
 
 
モンちゃん:
えっと、これは金属用スリッターの方式ね。大きく分けるとプルカット、ドライブカット、プル&ドライブカットの3方式があるんですね。
 
アンサー氏:
プルカット方式はカッター軸が駆動せず空転し、リコイラー駆動によるコイル張力によってカッターバイトを回転させ、スリッティングを行う方式。ドライブカット方式は、カッター軸を駆動させてカッター前後にループを設けることにより、カッター軸の速度とアンコイラーの巻き出し速度やリコイラーの巻き取り速度の微妙な差を吸収する方式。そして、プル&ドライブカット方式は、プルカット方式の時にカッタースタンドへ過大な張力が作用することを防止するため、カッターも駆動させてプルカットを軽減させるという方式なんだよ。
 
モンちゃん:
どの方式が一番良いんですか。
 
アンサー氏:
それは一概には言えないね。一般的にはスリットする材料の材質や板厚、コイルの長さなどによって決定するんだよ。神戸製鋼でも、ドライブカット方式とプル&ドライブカット方式の両方を適用しているよ。
 
モンちゃん:
この写真がスリッティングしているところですね。
アンサー氏:
銅合金製品条には錫めっきしたものもあって、製品表面を疵つけずに切断し、均一に巻き取るためのいろいろな工夫も施されているんだ。また、これらスリッティング技術を応用したトラバース・ワインド・コイルも製造されている。
 
モンちゃん:
それはどんなコイルなんですか。
 
アンサー氏:
簡単に言うと、素材を溶接し、連続的にスリッティングすることで長尺化したものを大きなボビンに巻き付けたものさ。こんな風に、さまざまな形でユーザーのプレス生産性向上をサポートしているんだよ。さて、何回か続いた銅合金板条製品の主要製造プロセスの説明はこれで完了。次回から、銅合金の材料特性と用途について紹介していくよ。
 
【スリッティングライン】
 
モンちゃん:
はーい、楽しみにしています!
 
 
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