モンちゃん:
今年もいよいよ半分過ぎちゃいましたね。ついこの間、お正月だと思っていたのに、もう夏ですよ!
 
アンサー氏:
モンちゃん、今年の夏の予定は?
 
モンちゃん:
海でリゾート。水着を買いにいかなくちゃ……と、その前にボディをシェイプしないとっ!
 
アンサー氏:
ははは、去年も今ごろ同じようなこと言ってたよね。
 
モンちゃん:
とほほ…そうなんです、それで結局挫折したんですけどねぇ。あーあ、何とかラクにボディの調整ができないものかしら。
 
アンサー氏:
食べ過ぎないで、ちゃんと運動することがイチバン。何事も努力だよ、モンちゃん。銅合金板条だって、歪みのない美しい状態にするためには大変な技術が必要なんだ。それこそたくさんの人たちの努力によって確立されてきた技術なんだよ……ということで、今回は銅合金板条の歪矯正について話をしよう。
 
モンちゃん:
そういえば、前に圧延技術による圧延歪調整の勉強をしましたよね。
 
アンサー氏:
うん、昨今、特にリードフレームに使用される0.3mm未満の薄い板厚の材料はより厳しい平坦度を要求されている。それで、前に説明した圧延技術だけでは対応できないものも多くあるんだよ。
 
モンちゃん:
また違う技術が必要となるんですね。
 
写真:リードフレーム
 
アンサー氏:
圧延によって生じる歪みには、さまざまな状態があるんだよ。ほら、図を見てごらん。
 
図を拡大する
 
 
モンちゃん:
へぇ、耳波に中伸び、クォーター歪なんていうのがあるのかぁ。それぞれの違いはどんなところなんですか。
 
アンサー氏:
例えば図ー1の耳波では、板の中央部の伸びの長さに対して、端の方の伸び長さが微妙に大きくなっている。つまり、この伸びの差によって板が歪んでいる状態を“歪”と呼んでいるんだが、その部分的に伸びている位置の違いで中伸びやクォーター歪となって、他にもいろいろな形状に変わるのさ。
 
モンちゃん:
なるほど〜、伸びている位置の違いなのかぁ。最初からこんな歪があったら、いい製品なんてできないですよねぇ。
 
アンサー氏:
もちろん。スリッター後、最終製品となった板や条が歪んだり、曲がりを発生したして、ユーザーでのリードフレーム加工後のフレーム品質に悪影響を及ぼすことになるよ。
 
モンちゃん:
ICリードフレームみたいに精密なものに使用される銅合金板条なんかでは、歪矯正は特に重要なプロセスになるってわけですね。
 
アンサー氏:
そういうことさ。さて、モンちゃんだったら、この歪を平坦に直すにはどうしたらいいと思う?
 
モンちゃん:
ええっと、伸びの長さが小さいところを大きいところと同じになるよう伸ばして長さを同じにしたらいいんじゃないかしら。
 
アンサー氏:
うん、基本的にはそういうこと。モンちゃんの言う通りにして幅方向の伸びの長さを揃えれば平坦になる。ただし、実際は、板はとても長いし、また長さ方向で歪の状態も微妙に異っているから、部分的に伸ばすのは難しいんだよ。
 
モンちゃん:
そうかー、じゃあ板全体をいっぺんに伸ばせばいいのでは……。
 
アンサー氏:
そうそう、板全体に長さ方向にある程度の引張応力、つまり張力を生じさせて全体を伸ばしてやると、伸びきった長さをほとんど同じに揃えることができるんだよ。図とグラフを見てごらん。
 
 
図を拡大する
 
モンちゃん:
わぁ、難しい記号が書いてある。
 
アンサー氏:
はは、では詳しく説明しよう。これは凹凸状の歪のある板全体を図の矢印方向に引張応力をかけて、意図的に新たな伸び歪を生じさせているところだよ。このグラフは引張応力と引張ひずみの関係を表したものなんだ。板の伸びの長さの短い部分がB-Bの曲線で、伸び長さの長い部分がC-Cの曲線。そして引張応力をかける前の元々の歪をΔεo、引張応力をかけて戻した時の歪をΔεresをあらわしてある。
 
モンちゃん:
Δεresの間が狭くなっているということは、引張応力をかける前と後では歪がかなり改善されているんですね。これならリードフレームを作っても安心です!
 
 
 
モンちゃん:
歪の矯正方法にもバリエーションはあるんですか。
 
アンサー氏:
うん、代表的な設備はストレッチャー、連続式ストレッチャーレベラー、ローラーレベラー、テンションレベラー、テンションアニーリングといったところだな。
 
図を拡大する
 
モンちゃん:
結構いろいろあるんだぁ。ストレッチャーは板の端と端を掴んで引っ張る感じですね。
 
アンサー氏:
ご名答!これは設備的にも容易で、大きな引張力を生じさせることができるんだけど、実際の板は何千メートルの長さでコイル状に巻かれているから、残念ながら効率的じゃないんだよ。
 
モンちゃん:
じゃあ、この連続式ストレッチャーレベラーはどうですか。これなら長いものでも大丈夫そうだし。
 
アンサー氏:
これは図のように入側と出側のブライドルロールに回転速度差をつけて、ブライドルロール間で板に張力を生じさせる方法。確かにコイルをほどいてラインを通過させ、またコイル状に連続で巻き取ることができるから、とても効率的ではあるんだ。ただし大きな張力を生じさせるため、入側と出側のブライドルロールに回転速度差を大きく生じさせると板とロールがスリップして、生じさせる張力に限界があるんだよ。
 
モンちゃん:
う〜ん、一長一短ですねぇ。
 
アンサー氏:
それから、千鳥に配列された、たくさんのロールで板を繰り返し曲げるローラーレベラーは、ロールにより板が曲がると外側に引張応力が生じる。それに連続的に交互に曲げ変形を与えることで板を伸ばし、歪状態を均一にするものなんだ。図を見てごらん。
 
 
 
モンちゃん:
あっ、なるほどー。これにはどんな特徴があるんですか。
 
アンサー氏:
上下それぞれのローラーレベラーを幅方向に分割されたバックアップロールで部分的に押さえ量を調節することが可能だから、微調整が容易なんだよ。
 
モンちゃん:
この方法なら、バッチリですね。
 
アンサー氏:
ところが、板厚が薄くなるとロール径も小さくしなければ外側に生じる引張張力が小さくなるため、板厚0.3mm未満の板にはロール径の限界で不向き。したがって、一般的に板厚の厚いものに適用されているのさ。
 
モンちゃん:
これもリードフレーム用の銅合金板条には使えないってことですか…ふーむ。
 
アンサー氏:
残る二つの方法だけど、先にテンションアニーリングを説明すると、これは入側と出側のブライドロール間に加熱炉を設けて、加熱と張力によりクリープ変形、すなわち伸び歪を生じさせる方法。クリープとは一定の張力を与えた状態で高温加熱を与えると、時間と共に板が変形(伸びる)ことで、その性質を利用したものなんだ。他の方法では、新たに生じさせた矯正歪により板の残留応力(内部応力)が大きく残るけど、この方法だとその残留応力は軽減することができる。
 
モンちゃん:
おお、やっと理想的な方法に出会えましたねぇ。
 
アンサー氏:
いやいや、実は加熱コストがかかることと銅合金は非常に高温酸化しやすいため、加熱炉内を還元雰囲気にコントロールするコストがかかってしまう。また、加熱により銅合金の特性が変化するというデメリットもあるんだね。
 
モンちゃん:
むむ、なかなか難しいなぁ。
 
アンサー氏:
それで残るテンションレベラーなんだが、これは連続式ストレッチャーレベラーとローラーレベラーを組合わせたもので、ストレッチャーで生じた張力下のもと、ローラーによる繰り返し曲げを行うと、少ない張力で大きな変形伸びを生じさせることができるという仕組みなんだ。もっと簡単に言うと、お互いの不足している張力を補っている方法ってことになる。この方法だと、単純に引っ張るよりも、はるかに小さい力で板を伸ばすことができて、設備費やエネルギーコストを削減できるというメリットがあるんだ。
 
モンちゃん:
ということは、もしや神戸製鋼はこの方法を採用しているんですねッ。
 
アンサー氏:
そうです!神戸製鋼のテンションレベラーのレベラーユニットには、幅方向に7分割されたバックアップロールが設けられていて個々にレベラーロールを押さえることができるから、処理する板の歪状態により幅方向の押え量の調節が可能なんだ。だから、より精度の高い矯正ができるという仕組みになっているんだよ。
 
モンちゃん:
歪みを直すのも、ホントに大変なんですねー。
 
アンサー氏:
では、最後にこんなデータを見せてあげよう。
 
図を拡大する
 
 
モンちゃん:
これは、矯正前と矯正後ですね。
 
アンサー氏:
コイルから一定寸法の板をサンプリングして、レーザー形状測定器で歪寸法を測定したものさ。
 
モンちゃん:
ほほぅ、テンションレベラーで矯正した後は、ちゃんと平坦になっていますね。一目瞭然だわ。
 
アンサー氏:
さっきも言ったように、近年は薄肉化・多ピン化されるIC用リードフレームの要求品質はより一層厳しくなっているから、こうした歪矯正技術は神戸製鋼のICリードフレーム用銅合金板条の需要ならびにシェアー拡大に大きく貢献しているんだ。
 
モンちゃん:
はい、とても重要な技術ということが、とてもよくわかりました!これからもさらに厳しい品質維持向上に応えていけるよう、技術改善は進められていくんですね。今後の技術発展に、ぜひ期待したいと思います。
 
 
copyright (C) kobelco all rights reserved.