モンちゃん:
はぁ〜、いよいよ春ですねェ。最近、なんか眠くって、朝もなかなか起きられないんですよ。
 
アンサー氏:
ははは「春眠暁を覚えず」か。春の夜は寝心地がいいから、夜明けも知らず眠り続けてしまうということだね。
 
モンちゃん:
夜明けどころか、一日中寝ていたい感じですよ。今日も、もう眠たいですもん。
 
アンサー氏:
じゃあ、パッと目が覚めるように、さっそく「銅合金」の勉強を始めよう!
 
モンちゃん:
前回は、溶解や鋳造のお話でしたよね。今回はそこから先の話になるんでしょ。
 
アンサー氏:
そうだね。溶解・鋳造された銅や銅合金の鋳塊を製品化するまでのプロセスの中でも、非常に大事な役割を持つ工程「圧延」についての話をするよ。
 
 
モンちゃん:
圧延しているところって、すっごく迫力があるんですよねー。それ見たら、確かにいっぺんで目が覚めそう…。
 
アンサー氏:
そもそも圧延加工というのは鉄鋼板条を中心に、非鉄材にも多く適用されている塑性加工なんだ。
 
モンちゃん:
“そせい”というのは、なんですか。
 
アンサー氏:
粘土みたいに、個体に圧力を加えた時に形がかわってしまう性質のことだよ。銅の塊に力を加えて板状にしていく圧延は、まさに塑性加工技術なんだね。モンちゃんは、基本的な圧延方法を知っているかな。
 
モンちゃん:
もちろん。2本のロールの間に材料を挟んで、そのまま薄く伸ばしていくんですよね。
 
アンサー氏:
もっと詳しく言うと、平行にセットされた2本のロールの間隔を、圧延したい板状の材料の厚みより狭くして、その隙間に材料を通過させて薄くしていく。
 
モンちゃん:
もちろん、2本のロールは回転している状態ですよね。
 
アンサー氏:
そうだね。1920年代に提唱された圧延加工理論では「圧延とは自転しているロールによる連続的な鍛造である」と定義されているんだよ。圧延はそれ以降飛躍的に進展した塑性加工技術で、今なお技術革新が継続中なんだ。
 
モンちゃん:
圧延の仕方には、確か熱間と冷間があるって聞いたんですけど。
 
アンサー氏:
一般的にはその二種類に分けられる。銅合金の熱間圧延は、まず鋳塊を700〜1000℃に加熱して、所定の温度以上を保ちながら圧延するんだ。
 
●熱間圧延
 
モンちゃん:
なぜ加熱するのかしら。
 
アンサー氏:
一般的に、金属は高温になると軟らかくなり加工がし易くなることと、鋳塊は鋳造された時に巨大な鋳造組織となっているんだけれど、加熱状態で圧延することで微細かつ良質な圧延組織ができるんだ。
 
モンちゃん:
ふーん、熱すると軟らかくなると同時にその状態で圧延すると質が良くなるんですね。
 
アンサー氏:
もうひとつの理由としては、数百mmある鋳塊の厚みを繰り返される圧延作業で一気に10〜20mm程度まで薄くしていくために、圧延による「加工硬化」を防ぐためというのがある。一気に薄くしておけば、後の冷間圧延工程で効率良く生産できるからね。
 
モンちゃん:
「加工硬化」っていうのは…??
 
アンサー氏:
うん、では冷間圧延の話と一緒に説明しよう。銅合金の場合、冷間圧延というのは材料を常温の状態で圧延加工することなんだよ。
 
モンちゃん:
熱間の反対で冷やしながらするのかと思ってたら、そうじゃないんだ。
 
アンサー氏:
そう、あくまでも常温。その状態で圧延すると板厚が薄くなるだけではなく内部組織(ミクロ組織)も一緒に伸ばされて、圧延されていくとともに材料がどんどん硬くなっていくんだよ。この現象が「加工硬化」というのさ。
 
モンちゃん:
圧延の他の加工法でも、やっぱり硬くなっちゃうのかしら。
 
アンサー氏:
冷間加工であれば、例えば鍛造加工でもこの現象は起きるよ。でも、銅合金は加工硬化した材料をある温度以上で一定時保持すると、潰された内部組織が再結晶して、硬化したものが軟らかくなってくるんだ。この現象を「再結晶」といい、その温度領域を「再結晶温度」というんだよ。
 
モンちゃん:
そうか、それで熱間圧延だと再結晶温度以上で圧延していくから、何度も繰り返して圧延しても加工硬化しないって訳ですね。
 
アンサー氏:
その通り。厚みも一気に薄くすることができるんだ。そして、熱間に対して再結晶温度以下の常温で加工されるのが冷間圧延ということさ。
 
モンちゃん:
銅合金にもいろいろな種類がありますよね。やっぱりそれぞれの特性によって、熱間圧延のやり方の条件とかが変わってくるんですか。
 
アンサー氏:
銅合金の種類によっては最終製品の特性を安定させるために、加熱温度はもちろんのこと、繰り返しの圧延途中の温度や圧延完了後の温度を制御する必要があるんだ。
 
モンちゃん:
熱間は質を良くするのと加工硬化を防ぐためにやるということだけど、冷間はどういう時にするんですか。
 
アンサー氏:
冷間圧延の主な目的は客先要求の厚さ、平坦度、圧延による加工硬化で硬さを調整することなんだ。冷間圧延工程にも「粗圧延」「中間圧延」「上がり前圧延」「仕上圧延」など、いくつか種類があるんだよ。「粗圧延」「中間圧延」は後の「上がり前圧延」の受入板厚を調整したり、負荷を減らす目的がある。また「上がり前圧延」は一般的に圧延後焼鈍工程に送り、それまで加工硬化した材料を焼鈍により材料組織を再結晶させて一定の軟らかさに軟化処理し、その後に「仕上圧延」で圧延する際の加工率を決める工程なんだよ。そして「仕上圧延」では受け入れた板厚を、客先要求の板厚に圧延で仕上げて、引張強さや硬さ等の機械的性質や板厚精度・平坦度に仕上げる…とこういう訳なんだ。
 
モンちゃん:
う、うーん、こんがらがってきそうだけど…要はさまざまな圧延工程を経て、製品が仕上がっていくということですね。
 
 
 
モンちゃん:
圧延機にはどんな種類があるんですか。
 
アンサー氏:
一般的に熱間圧延機は大きなロールを用いた2段圧延機が使われているよ。
 
モンちゃん:
冷間圧延機は、どうなんでしょ。
 
アンサー氏:
銅合金用は2段、4段、6段、12段および20段圧延機等がある。ちなみに神戸製鋼では半導体用のリードフレーム材や自動車ハーネス用の端子・コネクタ等の電子材料用銅合金板条を多く製造しているので、主に20段圧延機を活用しているんだ。
 
モンちゃん:
に、20段なんてすごいかも。
 
アンサー氏:
20段圧延機は「上がり前圧延」「仕上圧延」に使用されるんだ。ほら、ここに写真があるから見てごらん。
 
●20段圧延機 ●20段圧延機の内部
 
モンちゃん:
さすが2段に比べて、はるかにフクザツ…。文字通り20本ロールの組合せで圧延するようになっているんですね。
 
アンサー氏:
上下ともに10本ずつのロールがあるんだよ。特徴としては、材料を直接圧延するロール径が小さくて、これだと同じ量の圧延でも圧延荷重が低くなるから1回の圧延で強加工できるんだ。
 
モンちゃん:
圧延の回数が少なくなる…すなわち、生産性が良いんですね!
 
アンサー氏:
そういうこと!これだと極薄板厚0.07mmまで圧延可能なんだ。
 
モンちゃん:
すごーい。
 
アンサー氏:
それから、幅方向に5分割されたバックアップの偏芯ベアリングをそれぞれ回転させることができて、微妙な歪みも調整することができるんだよ。神戸製鋼の20段圧延機には、他社製の「センジマー」と当社機械エンジニアリング製の「ズンドビック」型圧延機があるんだ。
 
モンちゃん:
センジマー、とか、ズンドビックとか、なんだか面白いネーミングですね。
 
アンサー氏:
実はこれ、両方とも20段圧延機を開発したとても有名な人の名前なのさ。
 
モンちゃん:
へぇ〜!!!トリビアみたい!ところで、この20段圧延機には、どんな特徴があるんですか。
 
アンサー氏:
神戸製鋼製のものはAGC(Auto Gauge Control)とAFC(Auto Flatness Control)という自動制御が備わっている。AGCは圧延入り側で板厚を実測して、その板厚の変化を察知して圧下量を自動調整するんだ。また、圧延された出側の板厚も実測して圧下を自動調整する。
 
モンちゃん:
便利ですねぇ。で、AFCは…。
 
アンサー氏:
こちらは圧延された板の歪状態を出側のセンサーロールで検出し、予め設定された目標形状に仕上がるように、バックアップ編芯ベアリングを自動回転させることにより自動歪調整をするんだ。
 
モンちゃん:
このAGC、AFCは厳しい寸法・形状要求に応えるために大いに活躍しているんですね。
 
アンサー氏:
そうそう、それと第1中間ロールにはテーパーリリーフが設けられていて、このロールを幅方向にシフトさせることで幅の違う材料を圧延しても材料エッジの形状や板厚も調整できるようになっているんだ。特に銅合金は非鉄金属の中では硬い金属だから、アルミニウム等と比較しても圧延荷重や加工熱はとても高くなる。だから、機械剛性向上や加工熱除去のための冷却にも多くの工夫がされているんだよ。
 
モンちゃん:
どんな工夫ですか。
 
アンサー氏:
圧延では、ロール材料の焼き付きを防いだり、圧延加工によって生じた熱を冷やすクーラント効果を目的として潤滑油を使っているんだ。
 
モンちゃん:
その潤滑油になにか秘密があるのかしら。
 
アンサー氏:
潤滑油は大きく分けるとソリュブルオイルとミネラルオイルの2種類になる。ソリュブルオイルは軟水に乳化剤を用いて数%の油を粒子状に混ぜたもので水分が多く、クーラント効果に適しているんだ。もちろん油の濃度を上げて焼き付き防止を優先させることもできるがね。
 
モンちゃん:
なるほど。もうひとつのミネラルオイルはどうなんでしょう。
 
アンサー氏:
ミネラルオイルはいわゆる鉱物油をベースにしたもので、一般的には粘度を上げるほど潤滑性が良くなる。しかし圧延油が潤滑剤としてロール表面と材料表面の境界に引き込まれ、材料表面にピット状の小さな凹みと微小なひび割れのようなもの生じてしまううえ、外見上白っぽくなって、ツヤもなくなり、表面も粗くなってしまうんだよ。リードフレーム材などは厳しい表面粗さを要求されているから、簡単に圧延油の粘度を上げる訳にもいかない。つまり、圧延油は低粘度でかつ高潤滑なものと相反した性能が要求されているんだ。そこで、圧延油メーカーはベースオイルにアルコール系やエステル系の添加剤を入れ、この要求に対応しているよ。神戸製鋼でも銅合金圧延用に、圧延機のタイプ別に圧延油メーカーと共同開発で神戸オリジナル圧延油を開発しているのさ。
 
モンちゃん:
オリジナル圧延油を作っちゃうとは!いろんなニーズに応えるために、潤滑油ひとつにも技術と工夫が生かされているんですね。えーと、他にも何か特徴のある圧延機とかありますか。
 
アンサー氏:
そうだなぁ、神戸製鋼にはロール表面がクロムメッキと研磨によって鏡のような表面になっているスキンパス圧延機という2段圧延機があるよ。
 
モンちゃん:
それは、どんな目的で使われるのしら。
 
アンサー氏:
この鏡面仕上のロールで潤滑油を使わずに銅を軽く圧延すると、銅の表面がピカピカに仕上がるんだ。神戸製鋼の屋根板用製品「ホンアカ」や装飾用のバッチ等の銅合金素材は表面がピカピカだけど、そういうものをこのスキンパス圧延によって作っているんだよ。
 
 
 
アンサー氏:
では、最後おまけで銅合金圧延技術の中でも特殊な圧延加工を紹介しよう。それが、異形断面を持つ「異形条」。図を見てごらん。
 
●異形条の加工工程による断面形状の変化   ●異形条の種類と形状
 
モンちゃん:
L型とかT型とかW型とか…いろんな形があるんですね。
 
アンサー氏:
これらは主に半導体のパワートランジスターのリードフレームに使われている。薄いところはリード部分に、厚いところにはチップが搭載され、そこで発生する熱を放散させる働きを持っているんだ。
 
モンちゃん:
これ、どうやって作るんですか。
 
アンサー氏:
異形条の製造には切削や鍛造等の方法もあるけれど、圧延加工による方法も早くから確立されてきたんだよ。実はこれ、銅合金素材(長方形断面)を異形加工したロールで圧延し、異形断面を形成していくんだ。
 
モンちゃん:
あぁ、なるほど!ロールがそういう形になっているのかぁ。ふふ、意外と簡単ですね。
 
アンサー氏:
なんのなんの、異形断面の寸法精度の管理などはとても大変なんだよ。表面品質の要求も厳しいしね。とにかくここでも技術が生きているということさ。半導体および端子・コネクタ用の電子材料用銅や銅合金板条の品質は、これらの圧延技術で決定されるといっても過言じゃないんだから。
 
モンちゃん:
神戸製鋼の圧延機とその技術は、世界的にも高く評価されているんですよね!
 
アンサー氏:
設備機械とその技術は中東地域へもプラント輸出された実績もあるよ。
 
モンちゃん:
圧延の技術は、これからもどんどん進化して、ますますいろんな厳しいニーズに応えていくんでしょうね。それでは、次回の「やさしい技術」も楽しみにしていまーす。
 
 
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