モンちゃん:
明けましておめでとうございます!2004年初の「やさしい技術」ですね。今年も、がんばってアルミや銅の技術を勉強していきましょう!ということで、アンサー氏、今年もよろしくお願いしますねっ。
 
アンサー氏:
こちらこそ。今年も楽しく知識を増やしていこう。では早速、初勉強といきますか。
 
モンちゃん:
今年は何から始めます?
 
アンサー氏:
前回は銅合金板条の製造プロセスについて学習したけど、今回はその続編。銅合金の溶解と鋳造について勉強していくよ。高品質の製品を製造するためには鋳塊品質から良くする必要があるから、そういった意味で溶解・鋳造というのは製品品質の基本となるんだね。
 
モンちゃん:
ここで将来的に良品になるかどうか決まっちゃうのね。それは重要なプロセスだわ。
 
アンサー氏:
鋳塊は合金成分が規格内に入っていることはもちろんのこと、それと同時に溶湯品質を良くする必要がある。溶湯品質とは、溶湯中に含有される不純物、ガス成分および酸化物の種類や量の多少を意味するんだけど、それは原料の種類、溶解炉の雰囲気、溶解条件、溶解炉の耐火物および操業サイクルなどによって左右されるため、合金の種類ならびに鋳造方法に応じて最適な溶解方法を選択しなければならないんだよ。
 
モンちゃん:
選択するということは、溶解方法にはいくつか種類があるんですね。
 
アンサー氏:
 
シャフト炉概念図
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低周波誘導路
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コアレス炉
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まず溶解炉を大きく分けると燃焼炉と電気炉の二種類がある。燃焼炉の代表はシャフト炉、電気炉の代表はコアレス炉というんだ。両炉とも長府製造所の主力溶解炉として活躍しているよ。電気炉にはその他にチャンネル炉というのがあって、この三種類が現在、伸銅業界で主に使用されているんだよ。
 
モンちゃん:
それぞれ、どんな特徴があるんでしょう。
 
アンサー氏:
シャフト炉から説明すると、これは溶解能力が10〜50Ton/Hrと大きいことから、量産用の主力溶解炉として使用されているんだ。1960年代に米国アサルコ社によって開発・実用化されたんだが、もともと溶鉱炉をもとにして発達したものなのさ。その構造の特徴は、円筒状の炉の底部にバーナーが配置されていて、耐火材で内張りした炉(シャフト)内で原料を溶解していくんだよ。ほら、図を見てごらん。
 
モンちゃん:
あら、この形って何だかスペースシャトルみたい。
 
アンサー氏:
炉内での原料は逆円錐形になっていて、溶けた原料は落下し、底部から抜き出される。この炉では連続的に溶解することが可能なため、大量溶解ができるんだよ。また、上部より挿入した原料は、排気熱により予熱されるため非常に熱効率が高いのも特徴だね。
 
モンちゃん:
う〜ん、なかなか効率良くてナイスな炉ですね。
 
アンサー氏:
そうなんだけど、残念ながらシャフト炉は原料を効率良く溶解することにのみ使われる設備で、成分調整ができないんだよ。そこで一般的に保持炉と呼ばれる、溶解した原料を溜める設備と合わせて使用される。保持炉で所定の成分に調整され、鋳造されるという訳さ。ちなみに長府製造所もこの形式のシャフト炉を1基有していて、電気保持炉との組合せで使用しているよ。KFCを主体とする純銅系合金の溶解に活躍しているんだ。
 
モンちゃん:
そうか、二つ揃って完璧ってコトですね。じゃあ、電気炉はどうなんでしょ。
 
アンサー氏:
電気炉はその加熱方法によって抵抗炉と誘導炉に分類できるけど、工業的規模で使用されるものとしては誘導炉が優れているんだよ。
 
モンちゃん:
さっき言っていたコアレス炉とチャンネル炉も誘導炉なんですか。
 
アンサー氏:
そうなんだ。交流の電磁誘導作用によって生じる電流のジュール熱によって加熱を行なうのが誘導炉。その構造からコアレス炉(るつぼ型炉)とチャンネル炉(溝型炉)の2種類がある。
 
モンちゃん:
これも、それぞれに特徴があるんですよね。
 
アンサー氏:
図を見ると解りやすいよ。まず、コアレス炉はるつぼの外周に誘導加熱用のコイルを巻き、コイルに交流電流を通し、るつぼ内に挿入した原料に渦電流を発生させることでジュール熱を生み出し、原料を溶解する。一方、チャンネル炉は、単相交流変圧器の2次コイルに相当する位置に溝(チャンネル)を作り、そこに被溶解金属を満たす様にしたもの。1次コイルに変圧電流を送ることで被溶解金属内に誘導される2次電流によって加熱を行なっていくんだね。
 
モンちゃん:
ふぅん、被溶解金属がコイルの役目をしてるのね…ということは、溝にはいつも被溶解金属がなくちゃダメなんじゃないかしら。
 
アンサー氏:
よく気がついたね。まったくその通りで、チャンネル炉は溝部が溶解金属によって満たされている必要がある。このため種湯が必要で、溶けていない原料のみで溶解を開始することができないんだよ。それに、合金系の異なった品種を連続して溶解することもできないという欠点もある。
 
モンちゃん:
コアレス炉はどうなんですか。
 
アンサー氏:
コアレス炉は種湯も必要無く、室温から原料を溶かすことが可能で、一般的には少量多品種の溶解に適している。でも、近年はコアレス炉でも20〜30tを一度に溶解することができる大型のモノが登場してきて、大量生産向けにも生産効率の高いレベルなってきたんだ。また、NiやFeといった高融点金属の溶解もこのタイプの炉が得意とするところなのさ。
 
モンちゃん:
なるほど、こうしたそれぞれの特徴をふまえて溶解炉を選択してるって訳ですかぁ。長府製造所にも、このタイプの炉はあるんですか。
 
アンサー氏:
両形式の溶解炉があるよ。チャンネル炉は同じ成分系で注文量の多い黄銅系合金を、コアレス炉はその特徴を生かして、その成分でNi量の多いCAC92やFe量の多いKLF194に代表されるKLF並びにCACシリーズの溶解に活躍しているんだ。
 
モンちゃん:
そういえば、さっきアンサー氏は溶湯品質を良くすることが大切だって言ってましたよね。それはどのようにして対応しているのかしら。
 
アンサー氏:
そうそう、健全な鋳塊を得るには、第1工程である溶解鋳造段階でガスや介在物の少ない清浄な溶湯を作る必要があることはさっき言ったね。溶湯に溶け込んだガスは鋳造の際に鋳塊中に穴として、または酸化物などの非金属介在物として残留し、製品の特性を低下したり表面欠陥となって品質を落とす原因になる。これらの原因となるH2ガス、水蒸気、CO2ガスなどを極力排除する様、原料から設備、炉内雰囲気までも管理することで高品質な製品に対応しているんだ。
 
モンちゃん:
溶解から、いろんな気を遣って品質を保ってるんですね。
 
 
 
アンサー氏:
これは基本的なことだけど、鋳造っていうのはどんな製造法かは知っているかな。
 
モンちゃん:
鋳型に溶かしたものを流し込んでいくんですよね。
 
アンサー氏:
そうだね。もっと詳しく言うと鋳型に溶湯を流し込み半製品である鋳塊、あるいは最終製品である鋳物を製造することを指す。一般には、ダイキャストに代表される鋳物とは区別しているんだよ。
 
モンちゃん:
長府製造所ではどんなものを作っているんですか。
 
アンサー氏:
長府製造所では熱間圧延をすることを前提にして、断面が矩形で長さが4〜6mの鋳塊(インゴット)を製作しているよ。ここではモールドと呼ばれる鋳型を使用し連続的な鋳造方法を行っているんだ。さっきも言った通り鋳塊品質が製品品質の基本となるから、それに関わるモールドの設計や鋳造条件については特段の注意が必要なんだね。旧来は経験やトライアンドエラーによるところが大きかったけれど、最近は凝固解析技術の進歩により、シュミレーションによってモールド形状や鋳造条件を決定できる様になってきている。それにより中高温脆性によって鋳塊の段階で割れやすい合金系の製造、鋳塊内部の欠陥の抑制、表面品質の向上などのレベルアップが可能となっているんだよ。
 
モンちゃん:
この連続的な鋳造法って、昔からの方法なんですか。
 
アンサー氏:
連続鋳造方式が公開されたのは1930年代だね。まずアルミニウムの鋳造に採用された後、1940年代には伸銅業界への導入が始まったんだ。今日の伸銅品加工素材の大部分は連続鋳造法によって製造されているんだよ。
 
モンちゃん:
へぇ、アルミが先だったのか…連続鋳造方法にもいくつか種類があるんでしょ。
 
アンサー氏:
連続鋳造方法は大きく分けて全連続鋳造法と半連続鋳造法の二種類。そして、変わりだねとして洋箔やりん青銅などで行なわれている横型連続鋳造法もあるんだ。
 

横型鋳造設備ライン構成 [拡大する
 
モンちゃん:
全連続鋳造って、いったい何を連続させるんですか。
 
アンサー氏:
「全」連続鋳造は、その字の通り、鋳塊を完全に連続して生産するため、一定の成分、品質、形状の鋳塊を大量に生産することに優れている反面、多品種の生産には取りまわしが効かないんだ。
 
モンちゃん:
なかなか全て上手くいかないもんですねぇ。じゃあ、その欠点部分が得意なのが半連続鋳造ってことになるのかしら。
 
アンサー氏:
そういうことだね。半連続鋳造は、鋳塊の長さが限定されたバッチ式の操業形態を取っていることで品種、形状寸法を多種多用に変更することが可能だからね。それに近年では大型のコアレス炉の登場により、鋳塊断面の大型化や長さの長尺化、多本数を一度に鋳造することが可能となってきて、全連続鋳造に匹敵するほどの生産性を発揮できているんだよ。
 
モンちゃん:
長府製造所では両方の方法を行っているんですか。
 
アンサー氏:
いや、半連続鋳造だけだよ。でも、KFC、KLFシリーズ、CACシリーズといった数多くの品種を生産することに対応できる体制となっている。
 
モンちゃん:
そういえば、連続鋳造法の変わりだねって言ってた横型っていうのもありましたよねぇ。
 
アンサー氏:
横型連続鋳造というのは保持炉に直接鋳型を取り付け、水平方向に鋳塊を引き出す方式の連続鋳造技術さ。引き出された鋳塊は表面の酸化皮膜を面削され、コイルフォームに巻き取られる。保持炉から巻き取り機までは通常一連の設備として運用されるんだよ。
 
モンちゃん:
これはどんな特徴があるんですか。
 
アンサー氏:
比較的製品サイズに近い寸法で鋳造が行なえるから、高価な熱間加工設備を必要としないんだ。また、洋白やりん青銅といった、逆に熱間加工の困難な合金の製造に使用できることも、この鋳造法の特徴。長府製造所でも、熱間加工の困難なりん青銅の製造にこの方式の設備を使用しているよ。
 
モンちゃん:
溶解、鋳造って、ただ銅を溶かして型に入れる単純な作業じゃないってことが、今回よ〜く解りました。ここから品質管理をちゃんとしていくとは、何事も初めの一歩が肝心ってことなんですよね〜。まさに今年最初の勉強にふさわしい内容でしたねっ。では、次回の勉強も楽しみにしてまーす。
 
 
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