あんは和菓子の命
突然ですが、あんこは「つぶあん」と「こしあん」どちらが好きですか?
同じ原料から生まれたあんでも、つぶはん派、こしあん派で好みが分かれるところである。ちなみにアンパンマンの頭の中のあんは「つぶあん」だそうだ。
あんの原料は、小豆と砂糖と水で、基本的にはこれだけだ。シンプルな原料であるからこそ、微妙な差が大きな風味の違いに感じられるのであろう。「あの店はあんこがおいしいから」と、ひいきの和菓子屋を語る人も多い。あんは和菓子の命なのである。
 
 
シンプルだからこそ、原料、製法へのこだわりが味を左右する
あんにも小豆からつくるもの、白いんげん豆からつくるもの(白あん)など、さまざまな種類がある。豆の良し悪しが味の違いに大きくあらわれるため、産地にこだわるなど、多くの和菓子屋は良い豆を厳選して使用している。
一般的なあんの作り方は、まず小豆を水につけた後、火にかけて煮、沸騰したら煮水を捨てて冷水で小豆を洗う。この工程を「渋切り」と呼び、アクを洗い流すために行う。渋切り後は中火で煮込む。このときに煮すぎると小豆が割れ中身が出てきてしまい、粘りの強いあんになってしまい、煮不足だと口当たりが悪くなってしまう。さらに、こしあんの場合は皮を除いて、豆の中身だけを使用するため、煮上がった後に製あん機で皮と中身とに分け、中身だけを水にさらしてアクをとる。
そしていよいよ「あん練り」となる。豆を鍋に入れ、木ベラで攪拌しながら煮詰め、強火で練り上げる。弱火で長時間煮ると、あんの光沢がなくなり、舌触りもざらついたものになる。強火がいいからといって焦がしてはまずくなる。艶やかな光沢と色、もったりとした舌触りはここで決まるのだ。まさに腕の見せどころ。職人が最も気を使う工程である。
 
 
職人のこだわり「あん練りはさわり鍋」
この、大切なあん練りに使われるのが銅鍋である。職人には「さわり鍋」とも呼ばれている。「さわり」とは銅と錫の合金のことである。銅鍋は熱伝導率が非常に高く、鍋全体に熱が均一に伝わり、あんへの熱の伝わり具合が優れている。最近ではステンレス鍋を用いるところもあるが、こだわりのある和菓子職人ほど、「色、風味、光沢、味、どれをとってもさわり鍋が一番」という。
あんだけでなく、銅鍋は和菓子づくりに多く使用されており、例えば飴やカルメラ、また洋菓子でも、カスタードクリームやジャムなどで利用されている。いずれも加熱しながら煮詰めていく際に銅鍋が使用されている。強火でいっきに仕上げるには銅が適しているのだろう。微妙な差がおいしさの違いを生む菓子だからこそ、こだわりたい道具なのかもしれない。

ところで、あんを大量に使った和菓子として羊羹(ようかん)があるが、羊羹はもともと中国で「羊」の「羹(あつもの)」、つまり「羊肉のスープ」であった。平安時代に日本に伝わったが、禅宗が肉食を禁じていたため羊肉の代わりに小豆を練って蒸し、具として食べたという。その後、具だけが茶菓子として使われるようになり、今日の羊羹へ進化していった。今日の羊羹が、もとは羊のスープだったとは信じがたいが、羊羹を一切れいただくと口に広がる甘さで、そんな堅苦しいことは忘れてしまう。あんの甘さにめんじて、ここはひとつお茶にしようか。
 
あん練り用銅鍋   カスタード・ジャム用銅鍋   カルメラ焼き器
 
 
 
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