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魔除けのネギ坊主?
伝統的な橋などでしばしば見かける、柱の上に載っている玉ねぎのような形のものは何というのだろう。ころんと丸く、先端はつまんだように尖っている。よくよく見れば、なんとも不思議な形状をしたものである。

さりげなく存在感を発しているこの飾りは、擬宝珠(ぎぼし)と呼ばれる。擬宝珠は伝統的な橋や神社、寺などの高欄等に設置される装飾である。
ちなみに日本武道館の屋根の上に設置されているのも擬宝珠である。爆風スランプの名曲「大きなたまねぎの下で」のたまねぎは武道館の擬宝珠を指している。

擬宝珠は中国から渡来したと言われる。かつては朝廷と関わる建造物のみ存在していたようで、擬宝珠は尊い装飾なのである。

擬宝珠?とは聞き慣れない言葉ではあるが、その由来は諸説あり、一つは仏教の宝珠に由来するという説。宝珠とは地蔵菩薩などの仏像が手にのせている玉のことである。思いのままに欲しいものを出す玉で、病苦を除き、濁水を澄ませ、わざわいを断つ力を持っているとされる。この宝珠に似せたことから擬宝珠と名づけられたという。
もう一つは、ネギ坊主に由来するという説。ネギは、その臭気が邪気を払い魔除けになると信じられてきた。確かに先端が尖った丸い形状はネギ坊主に似ている。また擬宝珠は寺だけでなく、橋や神社など仏教以外の建造物でも使用されていることから、ネギ坊主説は昔から信じられてきたようである。

 
写真提供:(株)北嶋絞製作所
 
へら絞りでつくられる擬宝珠の独特な形状
擬宝珠は、高欄の柱のなかでも親柱に設置される。親柱とは両端、または一定の間隔で並ぶ主要な柱のことである。親柱が木製の場合、擬宝珠は銅や青銅等でできていることが多い。年中、雨風にさらされる擬宝珠は、親柱の腐食を抑えるため、耐食性に優れた銅が使用されているのだ。
 
この銅製擬宝珠はどのようにつくられているのだろうか。ころんと丸く、先の尖っている形状はプレス成形ではなかなか難しそうである。
擬宝珠はへら絞りという方法でつくられている。これは金属板を回転させ、その表面にへらと呼ばれる硬い棒状の工具を押し付け、少しずつ変形させていく成形方法のことをいう。その原理は、ロクロの上で粘土にへらを押しあて成形する陶器などの製作方法と同じ。へら絞りは、プレスではできないような深い絞りができるため、鍋ややかん等の身の周りの製品から、ロケット部品にいたるまで幅広い用途に活用されている。

へら絞りでもっとも難しいのは、へらの扱いであり、これはもっぱら熟練工の技術に頼っている。へらに伝わる感触によって、へらに加える力を加減しながら加工する必要があり、高度な技術が必要となるためだ。
擬宝珠のあの独特の形状は熟練の手技によって、形作られているのである。

 
写真提供:(株)北嶋絞製作所
 
 
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