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ウィーン・フィルのニューイヤーコンサートでお馴染みの「ラデツキー行進曲」。小太鼓とシンバルの軽快なリズムに、観客の手拍子が加わって、大いに盛り上がる。新年に相応しい勢いのある行進曲だ。
マーチングや行進曲では、パーカッションが重要な役割を果たす。なかでも曲の流れにアクセントを付けたり、リズムを高揚させたりするのに、活躍するのがシンバルだ。ときに曲の最高潮で登場し、いちやく脚光を浴びる花形打楽器である。

シンバルは、2枚を打ち合わせて演奏する「クラッシュシンバル」(一般的には合わせシンバル、ハンドシンバルと呼ばれる)と、1枚を吊るすか固定してバチでたたく「サスペンデッドシンバル」に分かれる。また2枚のシンバルを水平にホルダに固定し、ペダルで1枚を上下に動くよう操作するものは「ハイハット」と呼び、ドラムセットの中で使用される。

合わせシンバルは、2枚を打ち合わせるだけなので簡単と思われがちだが、奏法は実に難しく、奥が深い。一枚を上から下へ、もう一枚を動かしこすらせるようにして打ち合わせるのが基本で、二枚の角度、たたく強さ、止め方などで音が多様に変化する。非常に小さな音から一打でオーケストラ全体を制するほどの大きな音まで出すことができ、多彩な表現力がある。シンバルの重さは約4kg。重いシンバルを何度打ち合わせても、同じ音量、同じ音質が出せるようになるには、相当の練習量が必要となるようだ。

 
銅板を楽器に変えるハンマリング
一口にシンバルといっても、さまざまなメーカーから数多くのモデルが発売されており、その形状、サイズ、厚み、使用する材料の違い、加工方法等によって音質が変わってくる。
形状は、とくにシンバルの中央の膨らんだ部分をベルと呼ぶが、このサイズが大きいとより倍音が発生しやすく豊かなサウンドとなる。表面には音溝と呼ばれる溝が刻まれているものが多く、溝の深さや量などによって微妙に音が変わり、シンバルが持つ複雑な倍音を発生させる要因となっている。またサイズ、重量が大きいシンバルほど音量が大きく余韻が長くなるという特徴がある。
使用される材料によっても音に違いが出てくるという。シンバルには銅が用いられるが、メーカーによって銅合金の成分が微妙に異なる。シンバルはかつてのオスマントルコ帝国の軍隊が使用したものが世界に広まったとされ、トルコをルーツとしたメーカーが多く、トルコ系シンバルで多く採用されているのが銅80%、錫20%の青銅だ。その他銅92%、錫8%の青銅も用いられている。
また加工方法で音質に影響してくるのが「ハンマリング」だ。銅板をハンマーでたたき成形していく工程で、幾度もたたかれた銅板は硬くなり、複雑で豊かな音を持つシンバルへと変化する。ハンマリングは手作業で行われる場合と機械が使用される場合があり、とくに高級なシンバルは熟練の職人の手によってハンマリングが行われ、柔らかく包み込むような音がするという。たたきながら銅板を優れた音楽性と表現力に満ちたシンバルに変えてしまう、まるで錬金術のようである。
クラシックやジャズやロック、さまざまなジャンルの音楽に登場するシンバル。その音色は実に多彩で個性的だ。響きや余韻に耳を澄ませながら、職人技に思いを馳せてみるのもまた楽しいかもしれない。


シンバルの構造




手作業によりハンマリングを行っているメーカーもある。シンバルの形状もサウンドも職人の手に委ねられる。


資料提供:パール楽器製造株式会社
 
 
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