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写真提供(株)クサカベ
  小学生からプロの画家まで、大昔から現代まで、さまざまな人がさまざまな時と場所で絵を描いてきた。数百年前の絵と現代の絵、どちらが優れているかは決めることができないが、絵を描く道具は確実に進歩している。さまざまな道具の中でも特に進歩し続けているのが絵の具を入れるための容器、チューブである。
 
ないと困る!便利な入れ物『チューブ』
そもそも絵の具がチューブに入れられているのはなぜだろうか。
絵の具には油絵の具、水彩絵の具、アクリル絵の具などの種類がある。これらは空気に触れると固まってしまうので密閉して保存しなければならない。しかも好きなときに好きな分量だけ使いたいので、中身が取り出しやすくなければならない。さらに絵の具はペースト状でべとべとしているので容器から離れにくい。
こんな扱いにくい絵の具を保存できる容器がチューブなのである。私たちはチューブのおかげで、いつでも好きな場所に必要な量だけ絵の具を取り出すことができるのである。
 

押しつぶされて中身を守る、アルミ製チューブ
そんな便利な入れ物、チューブはやわらかくて強い材料でつくられている。樹脂製チューブが開発されるまで、チューブのほとんどはアルミニウムで作られていた。以前は鉛や錫も使われていたが、鉛は人体に毒性があり、環境汚染を引き起こす可能性があるので使われなくなり、錫は高価なため特殊な用途に限られている。
アルミ製チューブは光、空気、水などの影響から、中身を守ることができる。さらに、アルミニウムは力を加えると簡単に変形し、その後もその形を保つ性質があるので、チューブを押しつぶして中身を出した後、空気が逆流してチューブ内に入ることがない。そのため、変質しやすいものでも保存することができる。特に油絵の具は、空気に触れると固まりやすく、また長期保存することが多いため必ず金属製チューブが使われる。
アルミ製チューブの密閉性は他の材料のチューブに比べてひときわ高いため、絵の具以外にも、医薬品や接着剤など品質管理が重要となるものの保存に多用されている。

アルミ製チューブはインパクトプレスという方法で作られる。これは、雌型にアルミの塊を入れ、そこに強い圧力で雄型を撃ちつけることにより薄い筒状に成形する技術である。低コストで大量の加工ができるのが特長で、チューブ類の他に油性ペンの軸などもインパクトプレスで加工されている。
 

アルミ製チューブに入った油絵の具
(写真提供(株)クサカベ)


インパクトプレスの原理
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アルミのメリットにやわらかい樹脂をプラス
アルミ製チューブの他に、近ごろ見かけるようになったのがポリチューブである。これはポリエチレン樹脂を使用し、鉛を使わない安全なチューブとして登場した。力の弱い子供でも扱いやすいので児童用水彩絵の具に多く使われている。しかし中身を出したあと、空気を吸ってもとの形に戻ってしまうので、中身が変質しやすいという欠点がある。
このポリチューブの欠点を補うチューブとして開発されたのが、ラミネートチューブである。見た目はポリチューブに似ているが、実はアルミニウムが使われている。このチューブは紙やアルミ箔を樹脂フィルムでサンドするようにシート状に貼り合わせてできている。この貼り合わせをラミネート加工と呼ぶ。
アルミニウムのメリットである、光、空気、水などの影響から中身を守り、中身を出した後も、空気が入りにくいという性質が生かされている。また樹脂を使用しているため腐食しにくい。さらにアルミニウムの層の厚さが薄いので、やわらかく最後まで押し出しやすいという特長がある。このように優れたラミネートチューブは絵の具以外にも歯磨き粉、コンデンスミルクなどの食品、ハンドクリームなどの化粧品と、幅広く活躍している。

今では当たり前のチューブ入り絵の具だが、チューブが無かった頃は、豚の膀胱などの皮袋に絵の具を保存し、たいへん不便だったという。絵は屋内で描くものという常識を打ち破って、モネやセザンヌなどの印象派の画家たちが野外で描くことができたのは、持ち運びやすいチューブ入り絵の具が普及していたからだ。
せっかくチューブ入り絵の具のある時代に生まれた私たち、よく晴れた休日は久しぶりに外へスケッチにでかけてみてはいかがだろうか。


サクラマット水彩8色
ポリチューブ入り
(写真提供(株)サクラクレパス)

サクラマット水彩12色
ラミネートチューブ入り
(写真提供(株)サクラクレパス)
 
 
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