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中学校の全国共通ボタン「サクラボタン」
  入学シーズン。巷では真新しい学生服に身をつつんだ学生を見かける。今後の成長を見越してなのか、ブカブカの学生服を着ている生徒もいる。きっと1年生なのだろう。初めて制服に腕を通した時の、あの背筋が伸びるような緊張感。これからの学校生活への期待や興奮に胸を膨らませて、ボタンを一つ一つとめていく。そう、詰襟の男子学生服(学ラン)には、金ボタンが欠かせない。
かつて、「第二ボタンください」と卒業式で女子学生に求められた人もいるかもしれない。学生服の金ボタンは単なる洋服の小物ではない、青春の証、特別なボタンなのである。

格調高き金ボタン

標準型学生服の前ボタンは5個と決められている。
またボタンの図柄は、中学校ではサクラ模様の真ん中に「中」のマークが入ったものが全国共通となっている。これは「サクラボタン」と呼ばれている。ただし、最近では学校の校章等を図柄に入れた、オリジナルの金ボタンを使用する学校が多くなっているようだ。
金ボタンの製造を多く手がける(株)アイリスご担当にうかがうと、「最近ではオリジナル金ボタンが主流です。学校の数だけ図柄の種類があります。当社では今は2千種くらい取り扱っています」という。

学ランに使用される金ボタンは、「カブセボタン」と呼ばれる中空のボタンだ。これは表と裏の2つのパーツをかしめ合わせたボタンである。立体的なため、留め外しがしやすいという機能性に加えて、なによりもボタンとしての存在感がある。そもそも学ランは軍服をベースにつくられたものである。制服による連帯感やエリート意識をつくるために明治時代に導入された。立体的なカブセボタンは、黒色の布地に浮き立ち、格調高い風格をつくるのである。

ちなみに「学ラン」という名称は、江戸時代に洋服が「蘭服」と呼ばれていたことに由来する(当時は西洋といえばオランダ(阿蘭陀)を指した)。

 

オリジナル金ボタン(カブセボタン)
表面はホーニング(砂粒を吹き付け微細な凹凸をつける)加工でツヤを消し、部分的にバフ研磨でツヤを出しコントラストをつけている。

複雑な図柄は真鍮ならでは
金ボタンの図柄は、緻密な模様をはじめとして、実に複雑である。この細かな凹凸を高精度に加工するには、使用する材料が重要となる。
「金ボタンの多くは真鍮を用いています。細かな型押しが可能なのも、加工しやすい真鍮ならでは。仕上げに切削加工を行ったりもしますが、真鍮はとてもスムーズに行えます」と、同社ご担当は説明する。
加工しやすい真鍮を用いてカブセボタンは製造される。そのつくり方は、まず多種多様な金型を用いて、真鍮条(板厚:0.3mm)に複雑な図柄をプレスし、不要な部分を切り落とし表パーツをつくる。裏パーツも同様に加工し制服に取り付けるための輪を付ける。そして二つの部材の向きを揃えてかしめる。図柄のないボタンなら機械でかしめ加工ができるが、向きをあわせる必要があるため、一つ一つのボタンを手作業でかしめなければいけない。手間のかかるボタンなのである。
カブセボタンの他にも、板厚の大きい真鍮板(板厚:1.5〜2.5mm)を打ち抜いてつくった一枚ものの金ボタンもある(中空ではない)。ブレザータイプの学生服に多く使用されている。
そして、注目したいのがその表面加工である。最近では有名ブランドによる学生服も多く登場し、いっそう個性的な表情を持つようになっている。めっきだけでなく、ツヤ出しやツヤ消し、砂粒を吹き付け微細な凹凸をつけたり、七宝加工を施したり、エポキシ樹脂を流し込んだり…実に多彩である。

金ボタンはいわば学校の顔。精巧な模様一つ一つに学校の特徴が刻まれている。そのボタンと過ごす3年間あるいは6年間は、かけがえのないものとなるだろう。期待に胸膨らませた学生にふさわしく、金ボタンはいっそう美しく成長しているのである。
 

真鍮からつくられる金ボタン

     
板厚の大きい真鍮板を打ち抜いてつくった一枚もののボタン。ホーニング加工でツヤを消してマットに仕上げている   カブセボタンに紺のエポキシ樹脂を流し込み、さらに透明エポキシ樹脂でコーティングしている   カップ状の亜鉛ダイカストをベースとして、ここに図柄をつけた真鍮を装着し、透明エポキシ樹脂を流し込んでいる   表面にはアクセサリーで用いられることの多い七宝加工をプラスしている。


●取材協力 尾崎商事(株)、(株)アイリス
 
 
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