株式会社神戸製鋼所アルミ・銅製品販売網機関紙

新 こんなところにアルミ・銅

2020.02.27
喜びと感動のシーンを演出するスポーツ用具

東京オリンピック・パラリンピックの開催を間近に控え、スポーツへの関心が高まっている。今回は、多くのスポーツの中から、アルミ製のスポーツ用具を使った2つの競技にスポットを当てた。

放物線を描いて空を切り裂くやり投げ

陸上競技は、トラック競技とフィールド競技の2つに分けられる。このうちフィールド競技は、トラック競技のように何人もの選手が一斉に競うものではなく、一人ずつ試技を行い、その記録で順位が決まる。つまりフィールド競技とは、記録への挑戦であり、ある意味では自分との戦いである。
フィールド競技には、投てき競技と呼ばれる砲丸投げ、円盤投げ、ハンマー投げ、やり投げの4種目があるが、このうち最も長い距離を競うのがやり投げである。やり投げ以外の競技は、決められたサークル内から回転による遠心力を利用して投げる。これに対し、やり投げは唯一、助走路を走って勢いをつけて投げる。やりは、なだらかな放物線を描いて遠くへ飛び、その先端が地面に突き刺さる。
2019年現在、男子の世界記録は98m48㎝。あまり記録が伸びると他競技への支障や、安全面の問題があることから、やりの重さや長さなどの規定はこれまでたびたび見直されてきた。現在のやりの規定では、重さは男子で800~825g、女子で600~625g、長さは男子で2m60㎝~2m70㎝、女子で2m20㎝~2m30㎝と決められている。このほかにも、重量や重心の距離などが細かく決められている。
やりは穂先、柄、グリップの3つの部分から構成される。柄の素材は、ジュラルミン系の高強度アルミ合金やCFRP(カーボン繊維強化プラスチック)が多いが、ステンレスやスチールなども使われる。柄の前部をジュラルミン、後部をCFRPとして組み合わせ投てき時の振動を制御して、投てき距離が出るようにしたものもある。また穂先は、完全に金属製でなければならないと定められており、ここにもジュラルミンが使われる。
ジュラルミンはきわめて強度が高く、地面に鋭く突き刺さることができる。やり以外にも、アーチェリーや弓道の矢などにも使用されている。空を切り裂いて飛翔する競技には、まさに最適な素材だといえるだろう。

幅10㎝のステージに賭ける平均台

技と力、美しさの限界に挑む体操競技。長い間、日本のお家芸といわれ、男子は床運動、あん馬、吊り輪、跳馬、平行棒、鉄棒、女子は跳馬、段違い平行棒、平均台、床運動の各種目で競われる。
このうち、女子独自の競技である平均台では、幅わずか10cm、高さ125cm、長さ5mの平均台の上で演技を行う。平均台の上では、ターン、ジャンプ、バランスといった技に加え,宙返りなどのアクロバット系要素を取り入れたプログラムが繰り広げられる。演技時間はわずか90秒と決められている。競技は、演技中の技の難度によって点数が決まるDスコア(Difficulty)と、演技中の美しさによって点数が決まるEスコア(Execution)との合計によって、点数が決まる。
平均台で選手が演技する台の芯となる部分はビームと呼ばれ、アルミ合金で作られている。ビームの上部にはクッション材が取り付けられており、5mのどこでも均質なクッション性が得られるように工夫されている。
アルミ合金製ビームには、寸法精度が高く、堅牢であるという特徴がある。また体操器具は体操だけの常設体育館ばかりで使われるのではないので、運搬性や設置がしやすいような開発も行われており、この点でも軽量なアルミ合金の利点があると思われる。
最近の体操競技では、技の難易度が飛躍的に高まっている。世界のトップアスリートたちは、競って次々に難易度の高い技に取り組んでいる。これまでの判定、採点は審判の目視によって行われてきたが、専門家である審判にとっても公平な採点は至難の業である。そこで注目されているのが、3Dセンシング技術による自動採点システムの導入である。これは、3Dレーザーセンサーで選手の動きをセンシングし、「技のデータベース」と照合することによって技を特定し、瞬時に判定、採点を行う。すでに国際大会での導入が進められており、体操競技を取り巻く新たな動きとして注目されている。