TOP特集新製品・新技術歴史を見たマテリアル【新】こんなところにアルミ・銅
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皆さんが、船舶を見た時、船底が一面真っ赤に塗られているのに気づくだろうか。船体そのものは白、黒、青などさまざまだが、船底塗料はきまって、赤い。その理由は、塗料の成分に銅が含まれているからだ。
世界中の大海原に浮かぶ多くの船舶は、赤い亜酸化銅の塗料によって守られ、安全で効率的な航行を続けている。


船舶の航行に
なくてはならない赤い塗料。

穀物、石油、工業製品など世界の貿易には大型船舶が欠かせない。四方を海に囲まれた島国である日本にとっては、船舶は命綱とも言える物流の要だ。また国を安全に守るためにも、多くの船が活躍している。造船においては長い間、世界のトップランナーであり続ける日本。現在も各地に多くの造船所が点在し、世界中の35%もの造船を担っているのだ。
今日も国内のどこかのドックには、圧倒的な全容を誇る大型船舶が大海原に漕ぎ出す日を待っているだろう。その姿を見ると、船底一面が赤く塗られているのに気づかされる。真っ赤な船底には、一体どんな意味が隠されているのか。その理由は、意外にも銅にあった。
赤褐色の正体は亜酸化銅(酸化第一銅:Cu2O)の色、そのものだった。亜酸化銅が、フジツボなどの水棲生物の忌避物質であるため、それらを寄せ付けない。船体に付着物を近づけない、という根本的な対策が実現されている。
 
 
なぜ?船底塗料に亜酸化銅が使われる意味
大小、どんな種類の船舶であっても海からの大きな影響を受ける。海面に沈む船体下部は大きなリスクにさらされているのだ。何の対策もとらないと、あっという間に多くの水棲生物が船底に付着してしまう。海草、藻、貝など。なかでも日本の近海や海辺でもよく目にするフジツボはあっという間に船底にくっつく。なぜなら甲殻類であるフジツボの幼生は海水中を自由に泳ぎ回り、自分の住処となるべき場所を必死で探しているからだ。「あそこならくっつける」という場所を見つけたなら、一目散にめがけて付着し、セメント質の分泌物によって対象物にぴったりとはりついてしまうのだ。船底についた色々な付着物は、船体に多くの負担をかける。船そのものの重量が増しスピードが遅くなるし、動力もより必要になるためコストも上がる。また船舶の進路を決める舵に付着すれば、思うような舵取りができなくなり航行そのものにも影響する 。一度付いたフジツボなどは、はがすだけでも多くの手間がかかるし船体にキズをつけてしまうこともある。では、始めから水棲生物が付着しない塗料を、と考えられた。
古くコロンブスの時代は船底にはオイルが塗られていたというし、その後は、水棲生物の付着を防ぐ塗料として錫が用いられることが多かったという。しかし錫が海水に溶け出し、海洋の環境を著しく汚染することがわかり、それに替わるものとして亜酸化銅を含む船底塗料が開発されたのだ。亜酸化銅はフジツボの幼生などの水棲生物が嫌う化学物質であるため、それらは船底に寄ってこない。化学技術の発達が水棲生物の忌避物質を発見したことによって、船舶のリスクを大いに軽減することができたのだ。
日本の物流は、99.7%が船舶によるものだという。貿易国としてグローバルに活躍する船舶の活躍には、亜酸化銅の赤い塗料も大いに貢献してる。
 
 
 
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